2006年 05月 15日
5月14日(日)無名作家の憂鬱
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タルコフスキーの「鏡」を観る。
意図的にやっているとしか思えないが、ストーリーが追いづらい。観ていてなにがなんだかわからなくなるが、映像の美しさが見事でついつい見続けてしまう。第2次世界大戦や文化大革命などの報道フィルムが挿入され、”歴史”に対する監督の肌感覚のようなものを感じた。
しかし、わたしも作り手のはしくれとして、作品造りの際どのくらいその作品を”わからなく”するかのさじ加減が難しいのが分かる。
”わかりやすさ”を追求した作品というのももちろんあり、そういうものを志向する受け手・作り手が多いのも知っているが、この世界を描写するに”わかりやすい”物語はあまりにも非力だ。タルコフスキーが「鏡」で表現した肌感覚は、”わかりやすい”物語では絶対に描写できない。
だからわたしはこの作品を支持する。・・・のだけれど、
作り手として、作者の肌感覚を分かってもらうためには、最低でも集中して作品を見続けてもらう必要があるのだ。例えば、「ヴァンダの部屋」はとても面白い作品だが、あの、サービスカットの全くない、重々しい世界をそのまま楽しめる観客はあまりいないと思う。どう考えたって退屈だよ、あれは。もしあの作品が、ペドロコスタのものでなく、どこか無名の映画作家の作品だったら、もし「鏡」がタルコフスキー作品でなかったら・・・。
まず最後まで観ないよ。
でも、最後まで観た観客にとって、それが彼の趣向にあったものであったなら、もう「ペドロコスタ」や「タルコフスキー」のネームバリューは消えている(はず)。本当に優れた芸術作品は、そういう絶対的な力を持っているからだ。
とっつきづらい作品を最後まで見せる力は、なにも作品そのものだけに宿るわけではない。「誰かがいいと言っていた」という批評の力も見逃せない。ファッション的な要素ももちろんあるだろう。
だから、正直タルコフスキーがうらやましいよね。
作り手が批評を求めるのは、こういった理由があるのだろう。だって批評する意思がある人は、少なくとも最後まできちんと観てくれるから。でも観客の大半は(わたしだってそうだけど)批評する気はない。なにしろ批評はかなり面倒な作業だからだ。観客の大半が行うのは”感想”であり、これには固有の技術はいらない。これは”批評家”はいても”感想家”がいないのをみても明らかだ。
(GW中、次の作品に参加する役者と上記のことについて少し話をした。ここから先はその人への私信めいたものですが、)
作り手は、”感想”を求めてはいけないのだと思います。酔っぱらってあまりうまく言えなかったけど、僕はたぶんそういうことを考えていたのでしょう(^_^;)
鏡【デジタル完全復元版】
/ アイ・ヴィー・シー
ISBN : B0002B575A
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意図的にやっているとしか思えないが、ストーリーが追いづらい。観ていてなにがなんだかわからなくなるが、映像の美しさが見事でついつい見続けてしまう。第2次世界大戦や文化大革命などの報道フィルムが挿入され、”歴史”に対する監督の肌感覚のようなものを感じた。
しかし、わたしも作り手のはしくれとして、作品造りの際どのくらいその作品を”わからなく”するかのさじ加減が難しいのが分かる。
”わかりやすさ”を追求した作品というのももちろんあり、そういうものを志向する受け手・作り手が多いのも知っているが、この世界を描写するに”わかりやすい”物語はあまりにも非力だ。タルコフスキーが「鏡」で表現した肌感覚は、”わかりやすい”物語では絶対に描写できない。
だからわたしはこの作品を支持する。・・・のだけれど、
作り手として、作者の肌感覚を分かってもらうためには、最低でも集中して作品を見続けてもらう必要があるのだ。例えば、「ヴァンダの部屋」はとても面白い作品だが、あの、サービスカットの全くない、重々しい世界をそのまま楽しめる観客はあまりいないと思う。どう考えたって退屈だよ、あれは。もしあの作品が、ペドロコスタのものでなく、どこか無名の映画作家の作品だったら、もし「鏡」がタルコフスキー作品でなかったら・・・。
まず最後まで観ないよ。
でも、最後まで観た観客にとって、それが彼の趣向にあったものであったなら、もう「ペドロコスタ」や「タルコフスキー」のネームバリューは消えている(はず)。本当に優れた芸術作品は、そういう絶対的な力を持っているからだ。
とっつきづらい作品を最後まで見せる力は、なにも作品そのものだけに宿るわけではない。「誰かがいいと言っていた」という批評の力も見逃せない。ファッション的な要素ももちろんあるだろう。
だから、正直タルコフスキーがうらやましいよね。
作り手が批評を求めるのは、こういった理由があるのだろう。だって批評する意思がある人は、少なくとも最後まできちんと観てくれるから。でも観客の大半は(わたしだってそうだけど)批評する気はない。なにしろ批評はかなり面倒な作業だからだ。観客の大半が行うのは”感想”であり、これには固有の技術はいらない。これは”批評家”はいても”感想家”がいないのをみても明らかだ。
(GW中、次の作品に参加する役者と上記のことについて少し話をした。ここから先はその人への私信めいたものですが、)
作り手は、”感想”を求めてはいけないのだと思います。酔っぱらってあまりうまく言えなかったけど、僕はたぶんそういうことを考えていたのでしょう(^_^;)
鏡【デジタル完全復元版】
/ アイ・ヴィー・シー
ISBN : B0002B575A
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by O_pelican
| 2006-05-15 13:24
| 創作ノート